箱男にカンガルーノート(安部公房)
「箱男」と「カンガルーノート」を読んでみた。安部公房に初チャレンジと言うことで。
- 作者: 安部公房
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/05
- メディア: 文庫
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「箱男」はとにかく世界観が凄い。本当に不思議な小説だった。何とも言えない読後感があった。
もっと箱に入った男の独り言みたいな小説を想像していたけど、全然違った。なんか視点がぐるぐると移動して、虚が実になり、実が虚になる、みたいな妙な錯覚をうけた。オチは無いんだろうけども、オチが良く分からなかった。ちょっと違うけど、ドグラマグラに近い印象を受けた。
個人的にはあそこまで何度も執拗に視点を動かさなくても良いのに、と思いながら読んでいたんだけど、あそこまで執拗に視点を動かすからこそ出る味もあるわけで、その辺りは難しいバランスだなと感じた。
ただ、間違いなく安部公房はのぞきフェチ(笑)。個人的には箱生活はしたくないけど、箱の中から外を覗いてみたい、という欲求をちょっと誘発された。
- 作者: 安部公房
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1995/01/30
- メディア: 文庫
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「カンガルーノート」は、読み終わった後に、「世の中にはまだまだ知らない面白い本がたくさんあるんだな〜」って再認識させられたな。世界観が独特で作者がやりたい放題にやりたいことを書いているみたいな、そんな印象。なんか始めて村上春樹を読んだ時と同じ気持がした。
あらすじを書くと非常に滑稽な話になってしまう。足からカイワレが生えてきた男が皮膚科に行き、何故か移動式別ベッドで買い物したり、温泉宿にいったり、看護婦の自宅に行ったり、妙な病院に連れ込まれたり、と。
ただ、滑稽なストーリーなのに世界観が妙にきっちりしていて、生死観がくっきりしているので、非常に濃い小説にできあがっている。あと人間の好き嫌いみたいなのも如実に出ているので、カラマーゾフの兄弟に近いテイストもある。人間って極限状態に追い込まれるとこうなるよね、みたいな感覚も味わえる。
両作品とも諸手を挙げてオススメは出来ないんだけど、妙に心に残る2冊でした。
安部公房の代表作である「砂の女」も読んでみたいな〜なんて思った。