そろそろ内部留保について、ひとこと言っておくか。
「内部留保があるなら、そのお金を使って給料を払えば良いんじゃね?」みたいな言葉を良くネット上で見る。
その手の発言をネット上で見るうちに、もやもや感が高まったので、ひとこと言っておく。
「内部留保=現金ではありません!」
以上!
で、終わりでも良いんだけど、簡単に説明してみる。
内部留保とは
留保という言葉に「貯めておく」というようなニュアンスがあるけれども、貯まっているのは「利益」であって「現金」じゃない。*1
内部留保とは、広辞苑によると「企業が、税引後利益から配当金や役員賞与などの社外流出額を差し引いて、残余を企業内に留保すること。また、留保された金額。社内留保。」という説明になってる。会計の事が分からないと、「正直何の事やら良く分からん!」という感じの説明であると思う。
ものすごく簡単に説明しなおすと「内部留保は、利益から配当金と役員賞与を引いて残った物。」という感じになる。具体的には500万円利益が出たとして、配当金を250万円払って、役員賞与を200万円払うと、50万円利益が残る。この残った利益が内部留保という事になる。
ここまで読むと、「なんだ利益が残ってんじゃん」という話になるんだけど、
1.利益=現金じゃない
2.建物とか機械設備とか買うと、お金は出るんだけど利益は減らない
という話があり、利益が残ってもお金が残ってる訳ではない。*2
たとえば、売上1,000円出て、配当金も役員賞与も払わないとすると、内部留保が1,000円という事になる。ただ、売り上げても現金が入ってくるのはタイムラグがある例が多いので、内部留保=現金とならなかったりする。クレジットカードを考えるとわかりやすいんだけど、1,000円の買い物をカードでした場合、お店は1,000円の売上を計上するけれども、カード会社から入金するのは翌々月になるので、売上が即現金にならなかったりする。
ただ、この場合は、いつの日か内部留保=現金になるわけですが、売上を拡大するためにはお金がどんどん必要になるため実質手元に戻ってこないです。詳しくは「運転資金」とかで検索してみてください。
あと、現金売上が1,000円あり、建物(5年間使える)を1,000円で買った場合、現金残高は0円となります。建物は200円/年の費用*3となるので、当期の利益は1,000円−200円=800円となります。内部留保が残っていても現金が残らないのは大体このパターンが多いです。先行投資する場合、現金が先に逃げていくのです。
もちろん、翌年以降は利益以上の現金が入ってくる訳ですが、設備は毎年古くなるので、企業は継続して投資する必要があります。基本、手元に現金は残さないのです。*4
とは言え「内部留保が残るくらいに利益が出るんだったら、社員の給料を上げろ!」という議論なら分かる。要は、利益になる前に従業員に給与として支給することはできるわけだから。ただ、そうなると売上拡大やら設備投資が出来なくなるので企業がどんどんじり貧になっていくリスクはあります。経営というのは「内部留保を如何に使うのか?」にかかってくる仕事とも言えるので。
なので、「内部留保を崩して給料をもっと出せ」という議論は、半分正解で半分間違いであることがわかります。だって、手元に現金がなきゃ、給料として払えないわけだし、そもそも企業がじり貧になったら長期的に困るのは従業員なわけだからね。
ただ、設備投資もせずに*5、現金・預金の残高を積み上げている会社は、とっとと従業員に還元すれば良いと思うよ!その方が社会全体が潤うわけだし、景気も良くなるわけだから。
- 作者: 原丈人
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