ボトルネック(米澤穂信)
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/09/29
- メディア: 文庫
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ストーリーは主人公が別次元に異動するいわゆるパラレルワールド的な話なんですが、話の作り方が非常に秀逸。
とことんネガティブな主人公と、とことんポジティブな別世界の姉が繰り広げるストーリーなんだけど、まー2つの世界が違う事、違う事。そのギャップを楽しみつつ、この物語の着地はどうなるんだろうか?というのを固唾を呑んで見守る、とそんな小説。
小説としての完成度は本当に高い。グイグイ読ませる。ラストは賛否両論有ると思うけど、色々と考えさせられる内容でオイラ的には凄く好みだった。
米澤穂信さんの他の小説も読んでみたなーなんて強く感じた。ともあれ、こんな面白い作家が居るとは知らなかった。いや、本当に自分が知らないスゴ本はあなたが読んでいる、だなーなんて思ったりもした。
作家を紹介してくれたid:DecoyMaker(でこいさん)に感謝。たぶん、紹介してくれなければ、読まなかった。
以下はネタバレなのでたたみます。
姉のポジティブさで、両親の仲は良いし、無くなったはずの店は残っているし、あまつさえ死んだはずの恋人も生存していたりして、おまけに死んだはずの兄貴も生きていたりして、世界のギャップの凄さと、話の着地点の見えなさに頭がくらくらしてた。
ともあれ、途中で撮った写真がどっかで効果的に出てくるんだろうなという点と、元の世界に奇跡的に戻って、主人公が新たに道を歩み出す、というような展開になるだろうなとか思いながら読み進んだ。
読み終わった。
写真がなんの伏線にもなってなかったりして。あの写真を撮った子が怖かった。そして、元の世界に戻ったけれども、ある意味救いのないエンド。そして、「ボトルネック」の意味が切なすぎる。
いや、誰しも「ボトルネック」になる事はあるんだよ。
ただ、主人公の姉のように、特定の一個人が世界を変えられるくらいの影響力が常にあるのか?と言われるとそれは違うだろうと思うし、パラレル世界の兄貴が言っていたいように「主人公にも別の良いところ」があるはずなんだよなとも思った。
そう考えるほうがオイラは好きなんだよな。結局、主人公に必要なのは現状の否定じゃ無くて、自分の存在意義を探す事。死んでしまったヒロインが死んだのは主人公が悪い訳じゃないし、そんな鏡みたいな人は居ないよ。鏡になっているようで、実際にその人の自我はあるわけだから。死んだのも主人公の選択が悪かったわけでも、ヒロイン自体が悪かった訳でもないし。
ただ、こういう物語を読んじゃうと「自分の存在意義って何なのよ?」というのを強く考えてしまう。綺麗事で「他人のために生きたい」とか考えるのは嘘な気がするし、「自分が良いと思ったことに邁進すれば良い」とか思うのも別な意味で違う気がするし。
ともあれ「自分の存在意義」について、ゆっくり考えてみたいな、なんて事を思った。読んだ後に行動を促すような本って本当に良い本だよなーとも思ったりもした。
人の出会いと本の出会いは、本当に希有なものだよなぁ。