獣の奏者(戦蛇編・王獣編)
- 作者: 上橋菜穂子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/08/12
- メディア: 文庫
- 購入: 10人 クリック: 117回
- この商品を含むブログ (124件) を見る
読み終わった瞬間に目から涙が溢れてきた。
とにかく主人公エリンのまっすぐな生き様に、最初から最後まで圧倒されるばかりだったが、最後のあの展開は想像も出来なかった。はぁ、そういう終わりにしますか、と。
ファンタジー小説であり、読んでいると小野不由美さんの「十二国記」を想像させる。特殊な理(ことわり)をもつ国と、不思議な生物、そして戒律に従う登場人物たち、と。
主人公エリンはその生い立ちから世界の異端児として存在している。ただその異端児が故に世の中の理を気にせず、自分の思うがままに生きている。その自分の気持ちに沿った生き方が世界の理を大きくゆがめてゆく事になる。
この物語は、王獣を愛するという自分の心のままに生きるのか、世界を守るためにその気持ちを捨てるのか、そんな選択を迫られるエリン。そして彼女が選んだ選択は...みたいな話。
とにかくまっすぐなファンタジーを読みたい人には本当にオススメ。
続編もハードカバーで出ているので、早速買って読んでみたいな、と思う。
NHKアニメにもなった。原作通り作ると残酷すぎるので物語を再構築しているらしい。エンディングも違うみたいなので、ちょっとアニメも見てみたいな、なんて思った
こっからさきはネタバレなのでたたみます。
結局、母が闘蛇を最初に殺してしまったのは何故なんだろうか?というのが読み取れなかった。たぶん、闘蛇が繁殖しそうだったので、繁殖には毒となる特滋水で殺した、という理解で良いのかな?とは思うけれども。
でも父はおらず、母も序盤で死に、育ての親であるジョウンも物語の途中で姿を消してしまう。肉親には恵まれないエリンだけども、不思議と人の縁だけは繋がっていく。やっぱりまっすぐとした生き方に人は引かれていくのか?とそんな事を考えた。
あと書かなければいけないのはラストシーンの見事さ。
エリンが死を覚悟したときの「なんと豊かな夢を見たのだろう」の一節には身体が震えた。決死の覚悟でエリンを生かしてくれた母親の愛、そしてジョウンやエサルの尊い教え。そんなものが自分の身体の中にも駆け巡った。
それと獣は決して人には慣れない、というのが物語全般のテーマなんだけども、そのテーマを覆すかの様に、最後の最後に人と相容れないと思っていた王獣リランがエリンを救うシーンは、もう何とも言えない気持ちに包まれた。自分の生をあきらめたエリンがリランに救われた瞬間、エリンの真っ直ぐな気持ちがリランに伝わっていたのか、と思わず涙が頬をつたった。
ずるいなー凄い物語書くよなーとか思ったよ。ほんと。
続編は無くてもよい、と思った作者の気持ちはなんか分かる気がする。きちんと物語としては閉じているから。ただ、続編を読みたいという人達の気持ちも分かった。だって、この先のストーリーをやっぱり知りたいじゃん。
さて続編が、オイラの心にどんな音を奏でてくれるのか?今から楽しみです。